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偉い長くなってしまった前半。セラミックなどの治療と保険の銀歯の治療との違いについて、①見た目②強度③価格の3点でお話をしました。
残りは<④二次カリエスと<⑤健康面への影響ですね。

さぁ、行きましょう。

 


 

<④二次カリエス>

ここでは、補綴物(詰め物や被せ物の事を、専門用語で「ほてつぶつ」と言います。)の素材によって再び虫歯になる確率が変わってくるという事をお話します。

補綴物を選ぶ基準は、だいたい「見た目」や「費用」がメインになるのであまり注目される事はありませんが、地味に大事な要素ですので、更に(a)~(c)の3点に分けてお話します。

 

a. 素材の劣化

虫歯治療で詰め物やかぶせ物を入れる際には、それらを専用の接着剤で歯にくっつける必要があります。

保険で使う接着剤は製品の特性上、セラミックをセットする為の物よりも接着力が弱い上、唾液などの影響を受けやすく寿命が短いです。

接着剤が劣化して溶けていくと、歯と補綴物との間に小さな隙間ができ、その隙間から汚れや虫歯菌などが侵入して虫歯が始まります。これを「二次カリエス(二次う蝕)」と言います。


(気付かないだけで、世の金属の半分くらいは大小二次カリエスになっているイメージです。)

また、金属の素材は唾液の影響で徐々に腐食していくので、より隙間が出来やすくなります。

二次カリエスの厄介なところは、詰め物・かぶせ物の下で少しずつ進行していくため虫歯の進行がわかりづらいという点です。
補綴物の素材が金属の場合、中が見えないので虫歯が大きくなるまで見た目でもレントゲンでも発見がしづらいという大きなデメリットもあります。


(もう、典型的なダメな例です。すぐに治療しましょう。)

進行が進んで補綴物が外れる頃には虫歯はだいぶ悪化していて、さらに歯を削って治療しなければならなくなってしまう事が多く、最悪の場合、神経がダメになってしまうケースもあります。

その点、セラミックやジルコニアなどは劣化・腐食することがないですし、接着剤も唾液の影響を受けにくい物を使うことが出来ます。また、透明感があるので二次カリエスが起こっても早期に発見出来、金属を使用した場合に比べても二次カリエスの被害は少なくなります。

 

 

b.  変形しやすさ

更に、金属の弱点として「変形」があります。 前回〈②強度〉の中で「金属は割れない、取れにくい」というお話をしましたが、金属は「歪み」ます。強い力がかかっても、セラミックのように割れて外れるという事はなく、ズルっと潰れたりグニッと歪んで耐えてくれる粘りがあります。

だいたいは、何年もかけて少しずつ潰れて拡がっていきます。 イメージとしては、ステンレスのお皿を上下ひっくり返した状態で床に置いて、ハンマーで上からガンガン叩くような感じでしょうか。延々と続けていれば、だんだんフチが潰れてお皿が広がっていくのですが、これが金属の被せものでも起こります。

※ 現代人は一日に平均数千回の咀嚼(そしゃく)をします。人の顎の力はだいたい自分の体重と同じくらいと言われています。

つまり、上下の顎に自分の体重と同じくらいの負荷が毎日数千回かかるんです。それが何年も続けられていれば、歯に詰まった金属素材なんて嫌でも変形してきます。

フチがだんだん拡がっていくと、歯と補綴の間に隙間が出来ます。でも、変形するだけで外れてくれないので、隙間にひっそり汚れが溜まり、だんだん虫歯が出来ていきます。

実際、古くなった金属の詰め物や被せ物を外すケースは毎日のようにあるのですが、被せのフチだった部分はだいたい虫歯か腐食で黒くなっています。

この程度だと、急激に進行したり沁みたりする事もないのでまだ気が付かないですけどね。

それに対して、セラミック製の補綴物は歪むことがありません。劣化して詰め物の周りに汚れが挟まりやすくなる事もないので、二次カリエスの危険性は少ないんです。

勿論、割れて外れる事はありますが、それは設計や調整に不備がある場合や、食いしばりや歯ぎしりと言った極端な負荷がかかっている事が多いので、正しくセットしていればそうそうトラブルは起こしません。

 

 

c.  表面の感じ

最後に、素材の汚れのつきにくさのお話です。
保険で使用する銀の素材は汚れ(歯垢・プラーク)が付着しやすいため、セラミックよりも虫歯になりやすいと言われています。

先程のお皿の例で考えてみてください。1年間使ったステンレスのお皿陶器のお皿。表面の傷が多いのはどっちでしょうか?

一見光っていても、ステンレスのお皿は細かいキズだらけになって汚れが着きやすくなります。対して、陶器のお皿がガビガビに傷つくような事ってありませんよね。
お茶やコーヒーの汚れがついてくる事もありますが、洗えば綺麗に落ちます。

ちなみに、歯医者さんで使う素材別の汚れが着きにくいランキングを作るとすると、

ジルコニア

セラミック

金属

歯科用レジンプラスチック)」

という順になります。

保険で良く使うレジン素材は、どうしても劣化が早く汚れが付きやすいです。こうやって表面の状態を顕微鏡で見比べてみると、表面のツルツル具合の差は一目瞭然ですよね。

結局、どんなに綺麗で丈夫な素材でも、虫歯になってしまえば外す事になってしまいます。

せっかく入れた補綴を長持ちさせたかったら、一番大事なのは日々のお手入れと、定期検診なんです。面倒でもちゃんと通いましょう。

虫歯になっちゃったほうが、よっぽど面倒ですよ。

 

 

<⑤健康面への影響>

先程、<④二次カリエス>でも書きましたが、口の中に長期間金属が入っていると唾液の影響で徐々に金属成分が腐食して溶け出してきます。

溶け出した金属が体内に取り込まれ続けると、その影響で金属アレルギーを発症することがあります。
金属製のピアスやネックレスを身につけていると、その部分が痒くなったり肌荒れを起こしたりするのも似た原因です。


(以前、Cチャンネルというサイトで「金属アレルギー」についてお話ししたものを、当院のInstagramでも掲載させて頂きました。)

長年、原因不明の肌荒れが顔や手足に出るという事で悩んでいた方が、お口の中の金属をすべて外したら肌荒れが治ったという話も実際にあります。

これは、気づかないうちにお口の中の金属でアレルギーを起こしていたケースです。

また、金属でかぶせた歯同士が上下で咬み合うと、口の中で金属のスプーンを噛んだ時のような嫌な味がする事があります。

これは「ガルバニー電流」と言って、上下の歯同士に微弱な電流が流れる事が原因です。これは、単に変な味がするだけでなく「頭痛」や「肩こり」の原因になるとも言われています。

中学校の化学の時間、水溶液に亜鉛と銅の電極を突っ込んで豆電球を光らせた実験をしたのを覚えていますか?確か、水素が発生するんでしたよね。

要は、唾液を介して口の中で電池を作っちゃってるんです。


(※NHKさんより抜粋。「ダニエル電池」って言うらしいです。初めて知りました。)

これらの事などから、海外では金属を使った歯の治療をほぼおこないません。一部の低所得者向けに金属を使った治療を行うことがありますが、基本はレジンかセラミックでの治療を完了させます(メタルフリー治療)。
特に、ドイツやスウェーデンと言った医療先進国では、金属素材の毒性を懸念して一切の使用を禁止しています。

言ってしまえば…シルバーの指輪やネックレスを、年中、口の中に入れてるようなものです。用途が違うだけで素材はほぼ一緒ですから。

そう考えると、いくら費用が安く済むからと言っても…少し考えるところがありませんか?

少なくとも僕は嫌です。

 


 

最後に…

 

これは僕の個人的な印象ですが、最近はそういった「見た目」や「健康面への影響」を考えて、「少しずつ金属を交換していきたい」というご希望の方が増えてきている気がします。

特に赤坂という土地柄もあるのでしょうか、お仕事の関係上、見た目に対する意識が特に高まっているのかもしれません。海外で仕事をする機会が多い方も、特にその傾向が強い気がします。

よく、「先生だったらどうしますか?」と聞かれるのですが、もう利益とかビジネスとか抜きにして「僕だったらセラミックの一択です。」と答えます。

質問者さんの仰るように、本数が多いと費用面を気にしてしまいますが、焦って一気に全部を交換する必要はありません。前半でもお話したように目立つ順番があるので、位置大きさを考えて優先順位をつけ、少しずつ交換していくのもよいと思います。

当院にいらっしゃった方には、以上のように治療の素材選びについて熱く語らせてもらう機会はあるのですが。 そういう機会のない方の為にも、今回は長々と書きました。
一人でも多くの方にこの話を理解して頂けたら、10時間近くかけてこのブログを書いた甲斐もあるってもんです。

 

最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。

青山通り歯科