ブリッジすることになりました。
A:Cさん 40代女性
下の前歯を歯周病で2本抜かなければならなくなりました。
保険適用で治療する場合、1本の歯につき二本の歯にブリッジをかけないといけないと言われました。2本抜くので左右の2番3番も神経抜いて削ってブリッジをかけると言われました。左右2番までなら諦めもするのですが、本当に左右3番まで被せないといけないのでしょうか?ちなみに、左右1.2.3までは神経残っています。
A:院長 矢島
保険適用のブリッジで治療をする場合、国で定められた保険のルールとして「この歯がなくなった場合は、この歯を土台にしなさい」という最低限の基準が設けられています。大臼歯などの大きな歯がなくなったり、下の前歯のような細い歯を土台にする場合などは、必要な土台の本数が増えることがあります。なので、必ずしも「1本歯がなくなったら、その左右の1本ずつを土台にすればいい」という訳ではないんです。もし、この基準より少ない土台の本数でブリッジを作ろうとすると、保険が適用にならなくなってしまいます。
勿論、この基準にはちゃんとした根拠があります。先にも述べたように、「大臼歯などの大きな歯がなくなったり、下の前歯のような細い歯を土台にする場合」は、土台の本数を増やさないと、無くなった場所を支えるだけの力を得られないんです。
ちょっと算数っぽいお話をしましょう。
通常、1本の歯がなくなった箇所に3本連結のブリッジを入れた場合は・・・
真ん中のダミーの歯を含めて、上の歯からかかる歯3本分の圧力を2本の土台で支える必要があります。
これを、単純計算すると。上からかかる噛み合わせの圧力は「3」本分、ブリッジを支えている土台の歯の本数は「2」本となります。
なので、土台の歯が負担する圧力は
3(圧力)÷2(支える力)=1.5(負担)
つまり、1本の土台につき歯1.5本分の力を負担すると考えられます。
これでも、本来よりも大きく力がかかる事になるので、土台の歯に多少なりとも無理を強いているのは分かるかと思います。さて、もしもこれが先程の「大臼歯などの大きな歯がなくなったり、下の前歯のような細い歯を土台にする場合」だとどうなるでしょうか。
大臼歯などの大きな歯を失った場合。他の歯よりも大きなダミーの歯を支える必要があります。なので、上からかかる歯の圧力は、歯の本数である「3」よりも大きくなります。また、土台となる歯が他よりも細い歯になる場合、支える力は先ほどの「2」よりも小さくなる、と考えます。
すると、先程の計算式は・・・
3.5(噛む力)÷2(支える力)=1.75(負担)
や
3(噛む力)÷1.5(支える力)=2(負担)
となり、負担は最初の1.5よりも数字が大きくなります。
また、無くなった歯の本数が2本になれば、ブリッジとして連結される歯は「土台の2本」と「無くなった部分のダミー歯2本」です。この場合、合計4本のブリッジになるので・・・
4(噛む力)÷2(支える力)=2(負担)
と、1本の土台が食事のたびに通常の2倍の圧力を負担する事がわかります。
そんな状態が毎日続いていたら、土台の歯が折れてしまったり、歯を支えている骨の寿命が短くなるのは想像しやすいと思います。
なので、土台となる歯にあまり大きな負担がかからない、ブリッジが破損したりしない為にも、「この歯がなくなった場合は、これだけの本数の歯を土台にしなさい」と保険のルールが決められているんです。
勿論、「保険の適用じゃなくてもいいから土台の本数を減らしてくれ!!」という熱い希望があれば、無理矢理保険外で対応することはできます。ですが、長い目で見ればトラブルにの原因にしかならないので。それであれば、インプラントや入れ歯と言った別の選択肢を検討するのも、ひとつの手かもしれません。