保険と保険じゃない物の違いって(その1)
Q:Wさん 30代女性
さし歯にしないといけない歯があるのですが。かぶせ物の種類で悩んでいます。
見えるところなので白い方が良いんですが、保険適用のかぶせ物と保険外のかぶせ物だと値段が10倍以上違っていて迷ってしまいます。金属のかぶせ物とセラミックのかぶせ物だと、見た目以外で違いってあるのでしょうか?
A:院長 矢島
ご質問ありがとうございます。こちらは非常にたくさんの人がお持ちの疑問かと思います。このお話については、細かい部分まで掘り下げて話すと結構なボリュームになってしまいますので、2回に分けて詳しく説明をさせて頂こうと思います。
まず、被せ物はその場所にも寄りますが、Wさんの場合は「金属のかぶせ物」と仰っているので、犬歯よりも後ろの奥歯を被せるお話なんだと思います。なので、その前提でお話をさせて下さい。(※ 保険診療の場合、犬歯から犬歯の間の「前歯」に該当する歯は、表面だけに白いプラスチックを張り付けた「硬質レジン前装冠」というかぶせ物を被せる事になります。)
まず、保険適用の金属のかぶせ物は「メタルクラウン」と言います。素材は「金銀パラジウム合金」という物で、金・銀・銅・パラジウム・亜鉛などが含まれています。費用を出来るだけ抑えた上で、ある程度の強度・耐酸性を備えた合金で、大量生産という意味では非常にバランスのとれた素材かとは思います。ですが、2次的に虫歯になりやすかったり、金属アレルギーの原因になったりする事などから、欧米などでは殆ど使われなくなっています。
先進国では綺麗な歯はステータスの一部なので、口の中で金属が光っている事は恥ずかしい事で、ビジネスやプライベートにも悪影響を及ぼすという考え方が浸透しているんですね。
さて、次にメタルクラウンとセラミッククラウンの特徴を比べていきましょう。
メタルクラウン
メリット
・保険適用(3~4000円程度)
デメリット
・見た目に悪影響がある。
・虫歯になりやすい。
・金属アレルギーの原因になる。
セラミッククラウン
メリット
・歯と同じ色で目立たない。
・汚れがつきにくい。
・丈夫で変形がない。
(・質の良い接着材が使える)
デメリット
・費用が高い。
・調整が不足すると割れる可能性がある。
大きく以上のような点で挙げさせて頂きました。これらは、それぞれお互いを比較した場合のメリット・デメリットです。
費用
メタルクラウンは保険適用の素材のため、かぶせ物の費用は国によって決められています。手技の内容や接着材の種類によって少々差はありますが、だいたい3~4000円と考えて良いでしょう。対して、セラミッククラウンは保険適用外の素材になるので費用の決まりが無く、病院によって異なります。
見た目
メタルクラウンは銀色の歯になるので、当然目立ってしまいます。また、比較的知られていない悪影響として、被せた歯が黒く変色してしまうという事があります。これは合金の中の金属のイオンが唾液の影響で溶け出して、接している歯を黒くしてしまうからなんです。銀や亜鉛は錆びますから。
対してセラミックはご自身の歯の色に合わせて作る事が出来ます。セラミックの素材にも色のバリエーションが豊富なので、色の濃い歯や、濃淡のグラデーションの強い歯の方がいたら、その歯の色に合わせて自然な色のかぶせ物を作る事も出来ます。また、セラミックは表面に着色が着く事はあっても、保険の詰め物で使う樹脂(レジン)のように変色することは永久にありません。表面の着色なら、クリーニングで綺麗にすれば良いんです。
さて、ここまでは多くの方が知っている「費用」と「見た目」のポイントについて挙げさせて頂きました。引き続き、次回では「耐久性」と「虫歯のなりにくさ」という、あまり知られていないけど実は大切なポイントについてお話をさせて頂きます。
2/24アップしました!「保険と保険じゃない物の違いって(その2)」