親知らずって、絶対に抜かなきゃいけないの?
目次
「親知らず、抜いた方がいいですよ」
歯医者でそう言われたとき、どう感じましたか。
「やっぱりそうか」と素直に受け入れた人もいれば、「本当に抜かなきゃいけないの?」とどこか引っかかった人もいると思います。
親知らずに対するイメージは、人によってかなり違います。
「20代のうちに全部抜くもの」と思っている人もいれば、「痛くないから放っておけばいい」と思っている人もいる。
親・兄弟・友人に「抜いてすごく大変だった」という話を聞いて、怖くて相談できずにいる人もいます。
結論から言います。
親知らずは、「絶対に抜かなければいけない歯」ではありません。
同時に、「痛みがなければ放っておいていい歯」でもありません。
この2つを、まず頭に入れておいてください。
このコラムでは、「親知らずをどう考えればいいか」を整理します。
抜く・抜かないの判断基準、完全に埋まっている場合の注意点、そして当院がどういう方針で判断しているかも、できるだけ具体的にお伝えします。
「親知らずを抜くかどうか、まだ迷っている」という方には、特に読んでほしい内容です。
ただ、読んだ上で担当の先生の判断を疑いはじめるより、「もう少し聞いてみよう」と思っていただけたら、それが一番いい使い方なのではないかなと思っています。
親知らずが「抜いたほうがいい」と言われやすい理由
親知らずはトラブルを起こしやすい歯である
親知らずが問題になりやすい理由には、構造的な背景があります。
親知らず(第三大臼歯)は、歯列の一番奥に生えてくる歯です。
後述しますが、現代人の顎は進化の過程でだんだん小さくなってきたと言われています。
にもかかわらず、歯の本数も大きさも殆ど変わっていないんです。
その結果、一番奥の親知らずは「スペースが足りない中で生えようとする歯」になり、まっすぐ生えられず、斜めになったり、横を向いたり、骨の中に埋まったままになります。
こうなると、問題が起きやすくなります。
たとえば——斜めに生えた親知らずは、手前の歯(第二大臼歯)を横から押し続けることがあります。
半分だけ歯ぐきから出ている状態では、歯ぐきとの間に食べかすや細菌が溜まりやすく、繰り返し腫れることがあります。
また、一番奥で磨きにくいため、虫歯になりやすい上、なっても気がつきにくい…。
「なんて厄介な歯なんだ!!」
なんで、こんな歯があるんだ!って思いませんか?
僕らも思いますよ。治療するの大変ですから。
「全部抜くべき」という印象が生まれやすい背景
ただし、「親知らずは全部抜くもの」という考え方は、正確ではありません。
なぜこのイメージが広まっているかというと、いくつかの背景があります。
一つは、「将来トラブルになるなら早めに抜いた方がいい」という予防的な考え方です。
確かに、若いうちの方が骨が柔らかく、抜歯後の回復も早い傾向があります。
ただし、これは「今は問題がなくても将来的にリスクがある」という場合の話です。
もう一つは、説明の省略です。
「この親知らずは抜いた方がいいです」という正しい判断が、「親知らずは抜くものです」という一般論に聞こえてしまうことがある。
患者さんに十分な説明がないまま抜歯を勧められると、「親知らずは全部抜くものだ」という印象が残りやすい。
正直に言います。
「とりあえず全部抜いておきましょう」という判断が、常に正しいわけではありません。
ただし——「じゃあ抜かなくていいんだ」という話でもありません。
抜いた方がいいケースは、確かに存在します。
具体的には、こういった状況が「抜歯を前向きに検討すべき」目安になります。
斜めや横向きに生えていて、手前の歯を圧迫し続けている場合。
歯ぐきが腫れて痛む「智歯周囲炎」を繰り返している場合。
親知らず自身が虫歯になっていて、治療が難しい位置にある場合。
手前の歯(第二大臼歯)の根っこが、親知らずによってダメージを受けている場合。
矯正治療の計画上、抜歯が必要と判断される場合。
これらは「今すぐ抜かないと大変なことになる」という脅しではありません。
でも、放置しているとリスクが積み重なっていくケースです。
「痛みがないから大丈夫」とは言い切れない場面が、親知らずには多くあります。
これを頭に入れた上で、次の章を読んでください。
親知らずは“進化のミスマッチ”と考える
親知らずは、元から“悪い歯”だったわけではありません。
かつて、私たちの祖先は今よりもずっと硬いものを食べていました。
木の実、乾燥した肉、繊維質の多い植物など、しっかり噛まなければならない食事が中心でした。その結果、顎の骨はよく発達し、第三大臼歯(いわゆる親知らず)まできれいに並ぶだけのスペースがあったと考えられています。
ところが現代では、食生活が大きく変わりました。
やわらかく加工された食品が増え、咀嚼回数は減り、顎にかかる負荷も昔ほど強くありません。
その影響もあり、現代人は顎がどんどん小さくなってきていると考えられています。
小顔なのは良いのかもしれませんけどね。
ですが、ここで起きているのが「ミスマッチ」です。
先ほども説明しましたが、
歯の本数は昔とほとんど変わっていないのに顎のスペースは十分でない状況。
結果、一番最後に生えてくる親知らずが、
- 斜めに生えたり
- 横向きに埋まったり
- 半分だけ顔を出したり
といった状態になりやすくなったのです。
牛丼チェーン店で考えてみましょう。
席数はそのままなのに、店の面積を3分の2に縮小します。
当然、席もテーブルもギッチギチになりますよね。
そして不幸なことに、最後に来店したお客さん(親知らず氏)は、まともに座るスペースが無い。
隣のお客さんと膝が当たり、自分の食事を置くスペースもない。
すぐ斜め前では、黙々と牛丼に七味をかけている別のお客さん(第二大臼歯氏)。
少し、親知らず氏が可愛そうに思えてきませんか?
つまり、親知らずは“欠陥品”なのではなく、
現代の顎のサイズとの相性が悪くなっている、いわば被害者なんです。
だからこそ、
- きちんとスペースがあり、まっすぐ機能している親知らずは問題にならない
- スペースが足りずにトラブルを起こしている場合は、抜歯が合理的になる
という違いが生まれます。
親知らずをどうするかは、
「あるから抜く」「親知らずだから抜く」という単純な話ではありません。
今の顎の状態の中で、その歯がどういう位置にあり、どう機能しているか。
そこを見て判断する必要があります。
ちなみに、親知らずが「もともと無い人」もいます
ここまで読んで、「自分の親知らずはどうなんだろう」と思った方もいるかもしれません。
実は、生まれつき親知らずが無い人もいます。
これを、歯科では「先天性欠如(先欠)」と呼びます。
これ、正直に言うと――
親知らずに関してはちょっと“ラッキー”です。
- 横向きに埋まる心配もない
- 腫れることもない
- 抜くかどうかで悩む必要もない
そもそも存在しないので、トラブルも起きません。
もちろん、親知らずがあること自体が悪いわけではありません。
きちんと生えて、きちんと噛めていれば、それは立派なあなたの奥歯です。
でも、「最初から無い」というのは、ある意味で現代人の顎事情にフィットした状態とも言えます。
なので、レントゲンを撮って
「親知らず、ないですねぇ」
と言われたら、心の中で小さくガッツポーズをしてください。
すべての親知らずが抜歯対象になるわけではありません
さて、先ほどの先天性欠損の話は一旦置いておいて、親知らずは通常、上下左右に合計4本存在します。
ですがその4本、誰もが同ように生えてくるとは限りません。
まっすぐきれいに生えていて、上下でしっかり噛めている親知らずがある人もいます。
逆に、4本すべてが横向きや斜め向きで、手前の歯に悪影響を与えている人もいます。
状態は本当に一人ひとり違います。
「友達は全部抜いた」
「1本だけ埋まってて出てこない」
「親は1本も抜いていない」
他の人の経験は参考にはなります。
でも、それはあなたの判断基準にはなりません。
親知らずほど、“他人の体験談が当てにならない歯”も珍しいのです。
だからこそ、
「親知らずは抜くべきか、抜かなくていいのか」
その答えは、
「あなたの親知らずの状態による」としか言えません。
ただ——「状態による」で終わってしまうと、不親切ですよね。
ここは、そんなに逃げるコラムではありません。
なので次の章では、当院の具体的な判断基準をお伝えしましょう。
「うちの歯医者では抜いた方がいいと言われたけど、本当にそうなのか確認したい」
そんな場合にも、ぜひ参考にしてみてください。
青山通り歯科が考える「親知らずを抜かなくていい条件」
当院では基本、以下の3つの条件が揃っている場合、無理に親知らずを抜くことはしません。
条件① まっすぐ生えていて、上下でしっかり噛めている
親知らずが正常な位置にまっすぐ生えていて、上の歯と下の歯がきちんと噛み合っている状態であれば、その歯は「正しく機能している奥歯」です。
機能している歯をわざわざ抜く理由はありません。
問題になりやすいのは、斜めや横向きに生えているケースです。
この場合、手前の歯を圧迫して、歯並びや噛み合わせに影響を与えるなど、将来的な問題を引き起こす可能性があります。
また、上だけ、下だけ生えている親知らずも注意が必要です。
噛み合う相手がいないと、その歯は少しずつ伸び続けることがあります。
これを「挺出(ていしゅつ)」といいます。
伸びた歯が対面の歯ぐきや粘膜を傷つけたり、噛み合わせ全体のバランスを崩す原因になることもあります。
まっすぐ生えて、上下できちんと噛めているなら——
その親知らずは、悪者として特別扱いする必要はありません。
他の奥歯と同じように、「機能している歯」として扱います。
条件② 虫歯になっていない
親知らずそのものが虫歯になっていないこと、そして手前の歯(第二大臼歯)が親知らずの影響で虫歯になっていないことが条件です。
一番奥に位置する親知らずは、歯ブラシが届きにくいため、虫歯リスクが高い歯です。
虫歯が進行していれば、治療の選択肢として抜歯が視野に入ります。
特に問題になりやすいのが、「親知らずと手前の歯の間」の虫歯です。
斜めに生えた親知らずが手前の歯に接触していると、その接触部分に食べかすが溜まりやすく、両方の歯が虫歯になることがあります。
この場合、親知らずを抜いても手前の歯の治療が必要になることがあり、リスクがあるなら出来るだけ早めに対処したい状況です。
ただし、虫歯がなければそれだけでリスクが一つなくなる。
「今は虫歯がない」という状態を維持できているなら、抜く理由としては弱くなります。
条件③ ちゃんとブラッシングができる
親知らずの周りの歯ぐき(智歯周囲炎になりやすい部分)が腫れておらず、歯ブラシできちんと磨ける状態であることが条件です。
歯が曲がって生えている
歯ぐきが一部かぶさっている
歯と歯ぐきの間に食べかすが溜まりやすい
親知らずがこういった状況だと、虫歯になったり歯ぐきの炎症を起こしやすくなります。
親知らずの歯ぐきが腫れることを「智歯周囲炎(ちしししゅういえん)」と呼びます。
歯ぐきから血や膿が出て、痛みや口が開きにくくなるといった症状が出たりします。
ひどい場合には、顎の下や首まで腫れが広がることもあります。
智歯周囲炎は、一度治まってもまた繰り返しやすいのが特徴です。
「疲れたり体調が悪くなると親知らずのあたりが腫れる」
という経験がある方は、この状態に当てはまる可能性があります。
繰り返す場合は、抜歯を検討する理由になります。
逆に、歯ぐきが邪魔をしておらず、ブラッシングがきちんとできる状態なら、清潔を保ちやすい。
磨けているということは、細菌が溜まりにくい環境が保たれているということです。
感染リスクも低く、炎症が起きにくい状態といえます。
ブラッシングが難しい位置にあるかどうかは、自分では分かりにくい部分もあります。
定期的な検診で「ちゃんと磨けているか」を確認してもらうことが、この条件を維持するための一番の方法です。
以上の3つが揃っていれば、無理に抜く必要はありません
① まっすぐ生えていて上下で噛めている。
② 虫歯になっていない。
③ ちゃんと磨ける。
当院では、この3つの条件が揃っている場合、「無理に抜く必要はない」と判断します。
将来的に状態が変わることはありますので、「絶対抜かなくていい」とまでは言い切れません。
なので、定期的にレントゲンを撮ったりして確認していくことが大切です。
でも今の状態で上記3条件が揃っているなら、急いで抜く必要はない——これが当院の立場です。
「じゃあ、どうして他の歯医者では抜いた方がいいと言われたんだろう」と思う方もいるかもしれません。
考えられる理由はいくつかあります。
その先生が見た時点では、条件の一つが揃っていなかった可能性。
予防的な観点から、将来のリスクを考えて勧めた可能性。
あるいは、当院とは判断基準が少し違う可能性。
どれが「正しい」かは、一概には言えません。
ただ当院では、今の状態で3つの条件が揃っていれば、無理に抜くことはしません。
そしてその判断の理由を、きちんと説明するようにしています。
ただし、ここまでの話には一つ大きな前提があります。
「歯ぐきから見えている、または一部見えている」状態の親知らずの話です。
完全に歯ぐきや骨の中に埋まっている場合は、大きく話が変わります。
ただし「完全に埋まっている親知らず」は別の話です
完全埋伏の親知らずは、見た目だけでは判断できません
「完全埋伏(かんぜんまいふく)」とは、親知らずが歯ぐきや顎の骨の中に完全に埋まったままの状態を指します。
完全に埋まっているということは、口の中から見ても何も見えない。
痛みもない場合が多い。
だから「何もないから大丈夫」と思いやすい。
でも、これは大きな落とし穴です。
歯ぐきの下に埋まっている歯がどんな状態かは、見た目だけでは分かりません。
真上を向いているのか、斜めになっているのか、横向きなのか。
手前の歯の根っこに触れていないか。
神経や血管との位置関係はどうか。
これらは、レントゲンや必要に応じてCT撮影をしないと分かりません。
完全埋伏の親知らずは、先ほどの「抜かなくていい3条件」の対象外です。
見えていないから問題ない、ではなく、見えていないから確認が必要、と考えてください。
レントゲン画像を見ての自己判断は、やめてください
これははっきり言います。
「自分のレントゲンをスマホで撮って、ネットで調べてみる」
「過去に撮ったレントゲン画像を自分で見て、大丈夫かどうか考える」
これだけは絶対にやめてください。
ちょっと喧嘩に自信のある素人が、YouTubeでパンチの予習した上、いきなりプロボクシングのリングに上がるようなものです。
レントゲン画像は、単体で意味をなすものではありません。
その画像が撮られたのはいつか。今と状態は同じか。
年齢によって骨の状態は変わります。20代と40代では、同じ「完全埋伏」でも判断が変わることがあります。
親知らずが経時的に移動をしているのか、していないのか。
症状があるのかないのか。他の歯や神経との位置関係はどうか。
こうした情報を総合して、はじめて「抜くべきか、様子を見るべきか」の判断ができます。
画像の一部を見て、
「これは大丈夫そう」
「これは抜いた方がいいかも」
と判断することは、専門家でも慎重に行う作業です。
もう一つ。
ネット上には
「完全埋伏でも抜かなくていい」という情報も
「完全埋伏は早めに抜くべき」という情報も
どちらも存在します。
そして、どちらが正しいかは、あなた個人の状態にもよります。
広大な情報の海を調べていけばいくほど、どちらの意見にも「出会えてしまう」のです。
医療は多数決では決まりません。
自分の画像を見ながらネットの情報と照らし合わせて結論を出すのは非常に危険な行為です。
将来、レントゲン画像をスマホからアップロードすれば、AIが自動で診断してくれる時代が来るかもしれません。
おそらく、そうした研究はすでに世界のどこかで進んでいるでしょう。
ただ、2026年現在。
信頼に足るレベルで親知らずの抜歯判断を任せられるAIは存在しません。
だからこそ。
自己判断ではなく、歯科医師の診断を受けてください。
完全埋伏は歯科医院で総合的に判断します
完全埋伏の親知らずへの対応は、以下の情報を総合して判断します。
– レントゲン(またはCT)で確認した歯の位置・角度・深さ
– 手前の歯の根っこへの影響の有無
– 神経・血管との位置関係
– 患者さんの年齢と骨の状態
– 現在の症状の有無
– 将来的なリスクの見込み
これだけの情報を組み合わせて、
「今抜くべきか」
「経過観察でいいか」
「抜くとしたらどのタイミングか」
を判断します。
完全埋伏だからといって、必ず抜くわけではありません。
実際、症状がなく、周囲への悪影響も見られない場合には
「このまま様子を見ましょう」という判断になることもあります。
一方で。
完全埋伏であっても、「早めに抜いた方がいい」と判断されるケースもあります。
たとえば、親知らずが手前の歯の根に接触している、あるいは接触しそうな角度で埋まっている場合。
この状態を放置すると、手前の歯にダメージが蓄積する可能性があります。
こうしたリスクは、外から見ただけでは分かりません。
レントゲンを確認して、初めて見えてくる情報です。
ここで大事なのは、
「確認した上で様子を見る」という判断と、
「見えないから、とりあえず放置する」という状態は、まったく違うということです。
完全埋伏の親知らずがあると分かっている方は、
症状がなくても、一度きちんと確認しておくことをおすすめします。
番外編:矯正治療の前に抜かなきゃいけなくなるかも
そして、もう一つ。
矯正治療を検討している場合は、話が少し変わります。
歯を大きく動かす治療では、奥に埋まっている親知らずが移動の妨げになることがあります。
そのため、矯正開始前に抜歯を検討するケースもあります。
「今は痛くないから関係ない」ではなく、
これから歯をどう動かすか、どんな治療を予定しているかによっても、判断は変わります。
完全埋伏の親知らずは、
“今の症状”だけで決める歯ではありません。
将来の治療計画まで含めて、総合的に考える必要があります。
親知らずは「必ず抜く歯」でも「放っていい歯」でもない
ここまでの内容を整理すると、こういうことになります。
親知らずは、状態によって
「抜かなくていい歯」にも
「抜いた方がいい歯」にもなります。
まっすぐ生えて、きちんと噛めて、虫歯がなく、しっかり磨ける。
この条件が揃っていれば、無理に抜く必要はありません。
一方で、
斜めに生えている
腫れを繰り返している
手前の歯に悪影響を与えている
こうした場合は、抜くことを前向きに考えた方がいいケースもあります。
完全に埋まっている場合は、見た目だけでは判断できません。
レントゲンで確認し、歯科医師が総合的に判断する必要があります。
「全員が抜くべき歯」でもなく、
「痛くないから放置でいい歯」でもない。
それが、親知らずという歯の正直な姿です。
一つ付け加えておきます。
「痛みがないから大丈夫」という判断は、親知らずに関しては特に注意が必要です。
斜めに生えて手前の歯を押していても、痛みとして現れないことがあります。
虫歯が進行していても、奥すぎて気づかないことがあります。
完全埋伏のまま何年も過ごしていても、ある日突然、腫れや痛みが出ることもあります。
「今は何も感じない」は、
「問題がない」と同じではありません。
これは親知らずに限った話ではありませんが、
親知らずでは特に起きやすいことです。
そして最後に。
「じゃあ自分はどっちなのか?」
このコラムに辿りついた方の多くは、今まさに親知らずで悩んでいるのだと思います。
ですが——
非常に残念ながら、その答えはこのコラムの中にはありません。
さっき言いましたよね?けして自己判断はしないでください。
あなたの親知らずをプロの目線で実際に確認しない限り、責任をもって「抜くべき」「抜かなくていい」とは言えないんです。
あなたがこの長いコラムを読み終えた次にやるべきことは、以下のどちらかです。
① かかりつけ医のホームページを開いて診療日を確認する。
② Google mapを開いて★の多そうな近くの歯医者を探す。
迷ったら、まずは一度きちんと確認を
「抜く必要があるかどうか、一度診てもらいたい」
こういう相談は、当院でもとても多いです。
- 他の歯医者で抜歯を勧められたけど、本当に必要か確認したい
- 痛みはないけど、親知らずがあることが気になっている
- 完全に埋まっているらしいが、どうすればいいか分からない
- 抜歯が怖くて、ずっと先延ばしにしてきた
- 「20代のうちに抜いた方がいい」と聞いたけど、もう30代になってしまった
こういった方が、「まずは話だけでも」という感覚で来院されることが多いです。
年齢について:よく聞かれる「もう遅いですか?」に答えます
これは本当に聞かれます。
若い方が骨が柔らかく、抜歯後の回復が早い傾向がある。
これは事実です。
ただし、30代・40代だからといって「遅すぎる」ということはありません。
大切なのは年齢そのものではなく、
「今の状態で、抜くメリットとリスクのバランスがどうか」 です。
年齢が上がるにつれて、抜歯の難易度や回復のスピードが変わることはあります。
でも、多くの場合、年齢だけを理由に「抜けない」ということにはなりません。
「もう遅いかも」と思って諦めている方こそ、まずは一度確認にいらしてください。
当院の相談は「抜く前提」ではありません
当院では、こういった相談を「抜く前提」で進めません。
レントゲンなどで状態を確認し、
- この親知らずは今どういう状態なのか
- 抜く必要があるとすれば、なぜなのか
- 抜かなくていいとすれば、その理由は何なのか
を、できるだけ丁寧に説明します。
私たちが大事にしているのは、
「抜くか抜かないか」を早く決めることではありません。
「なぜそうするのか」を理解した上で、患者さん自身が判断できること。
それが一番大事です。
歯科医師が「抜いた方がいい」と判断したとしても、最終的に決めるのは患者さんです。
だからこそ私たちは、「この状態だから、こういう理由で抜歯を勧めています」と説明することを大切にしています。
「抜いてください」でも
「まだ考えさせてください」でも
どちらでも構いません。
まず現状を確認して、そこから一緒に考えましょう。
それが当院のスタンスです。
相談の入口として、カウンセリングもご利用ください
当院では、親知らずに関するカウンセリングも行っています。
「抜く相談」ではなく、
「抜く必要があるかどうかの確認」 として、気軽にお越しください。
※検査(レントゲン等)や費用の扱いは状態・内容によって異なるため、当日ご案内します。
(ここを最初にクリアにしておくと、安心して相談できます)
まとめ:親知らずの判断に、正解はひとつではありません
最後に、このコラムでお伝えしたかったことを整理します。
親知らずは、「絶対に抜く歯」ではありません。
まっすぐ生えて噛めていて、虫歯がなく、磨ける状態なら、無理に抜く必要はない。
当院では、この3つの条件が揃っている場合、「無理に抜きません」というのが基本的な考え方です。
同時に、「痛くないから放っていい歯」でもありません。
痛みがない状態でも、問題が進んでいることはあります。
斜めに生えて手前の歯を圧迫していても気づかないことがある。
完全埋伏のまま何年も過ごしていても、ある日突然トラブルが起きることもある。
「今は大丈夫」は、「ずっと大丈夫」を意味しません。
完全に埋まっている親知らずは、見た目では判断できません。
歯ぐきの上から何も見えなくても、骨の中でどんな向きに埋まっているかは、レントゲンで確認しないと分かりません。
「痛くないから何もない」という判断は、完全埋伏には当てはまりません。
レントゲン画像を見ての自己判断は、やめてください。
これだけはハッキリと言います。
画像の一部だけを見て判断することは、専門家でも慎重に行う作業です。
年齢、骨の状態、手前の歯との関係、症状の有無——
これらを組み合わせて初めて判断できることであって、画像だけで結論を出すことはできません。
「抜く・抜かない」の判断は、歯科医師が総合的に行うものです。
歯の位置、角度、年齢、症状、手前の歯への影響。
それらを踏まえて判断し、その理由をきちんと説明すること。
それが、歯科医師の仕事です。
親知らずとの付き合い方に、全員共通の正解はありません。
あなたの口の中の状態によって、「抜く」が正解になることもあれば、「抜かない」が正解になることもあります。
ただし。
「確認せずに放置する」だけは、どのケースでもおすすめできません。
石ころか時限爆弾かも分からないものを、家の床下にずっと置いておくようなものです。
石ころなら、何も起きません。
でも爆弾だった場合、いつか被害が出るかもしれません。
親知らずも同じです。
自分の親知らずが、今どういう状態なのか。
それを知ることが、安心へのいちばんの近道です。
迷ったら、まずは一度きちんと確認を。
それだけで、不安の半分はなくなります。
青山通り歯科 院長
2008年に日本歯科大学を卒業後、数々の臨床経験を積み、現在は赤坂見附の「青山通り歯科」院長として患者様に寄り添う治療を提供しています。最新のデジタル技術を活用し、審美歯科から予防歯科まで幅広い診療を行うことで、多くの患者様の信頼を得ています。
また、ウェディングや建築、アーティストのポートレート撮影を中心とするプロカメラマンとしても活動しています。
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