お口の中が感染症の温床に?歯周病予防とインフルエンザ予防の知られざる関係
目次
はじめに
冬になると毎年のように話題になるインフルエンザ。今年はその猛威が例年を超える規模となっています。厚生労働省の報告によると、2024年12月末時点で定点医療機関あたりのインフルエンザ患者数は64.39人を記録し、過去最高値を更新しました。
特に東京都では、2024年9月2日以降、インフルエンザ様疾患による集団事例が1,606件報告されており、学校や保育所での臨時休業も相次いでいます。このような状況の中で、感染を防ぐためにマスクや手洗いだけでは不十分かもしれません。
実は、お口の中が清潔でないとインフルエンザにかかりやすくなる可能性があるのです。この記事では、歯周病菌がどのように感染症のリスクを高めるのか、そしてその予防方法について詳しくお話しします。
定点医療機関当たり患者報告数 2025年1月12日(第2週)まで(東京都感染症情報センター)
なぜ歯周病がインフルエンザリスクを高めるのか?
歯周病菌が体全体に与える影響
歯周病菌は、歯茎に炎症を引き起こすだけでなく、血流を通じて全身に広がり、免疫機能に悪影響を及ぼすことがわかっています。これにより、体が感染症に対して弱くなるのです。
また、歯周病は動脈硬化や心筋梗塞、呼吸器疾患、糖尿病。妊婦さんが歯周病に感染している場合は早産や低出生体重児のリスクが高まる事が研究により分かっています。更に一部の研究では、歯周病菌が脳に到達し、アルツハイマー病の発症や進行に関与している可能性が示されています。
日本大学の研究チームによる発見
日本大学の研究チームが、歯周病菌がインフルエンザウイルスの感染を助長するメカニズムを解明しました。この研究結果は、米科学誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカルケミストリー」に掲載されており、歯周病の代表的な原因菌が生み出す「たんぱく質分解酵素」によって、体に入ったウイルス表面のたんぱく質が切断され、より細胞に感染しやすい形状に変化する、という現象が起こる事が確認されているそうです。
この発見は、口腔ケアが感染症予防において極めて重要であることを科学的に裏付けるものです。
引用論文:Porphyromonas gingivalis gingipain potentially activates influenza A virus infectivity through proteolytic cleavage of viral hemagglutinin
固い牛肉のワイン煮込み?
突然ですが料理はしますか?
固い牛肉をビールやワインで煮込むと、とても柔らかくなって美味しく食べられるのですが、例えるならそんな感じです。自分も昔、牛筋肉をビールや圧力鍋で柔らかく煮込んでよく食べていたのですが、あれはお酒の中に含まれているアルコールや酵素が肉に含まれる繊維性の組織を分解してくれる事によって柔らかくなるんです。
それと似たような感じで、歯周病の菌が生み出す「ジンジパイン(gingipain)」という酵素が、インフルエンザウイルスの表面にある「ヘマグルチニン(HA)」というたんぱく質を一部切断する事によって宿主細胞に侵入しやすくなる環境を作り出します。直接目で見た訳じゃないので分からないですが…ウイルスが柔らかくなって細胞にくっつきやすくなるようなイメージでしょうか。
実際に起こりうるリスク
高齢者や基礎疾患のある人
免疫力が低下している人にとって歯周病はさらに危険です。歯周病菌がインフルエンザをきっかけに肺炎を引き起こす可能性もあります。更に、先ほど述べたような動脈硬化や心筋梗塞、糖尿病のリスクも高めます。
健康な若年層も油断できない
たとえ健康な若い人でも、歯周病があるとウイルスに感染しやすくなるため対策は必要です。今が健康だから、とタカをくくってお口の健康をおろそかにすると、将来的に様々な問題を引き起こすきっかけを育んでしまいます。
どうやって予防するのか?
定期的な歯科検診とクリーニング
青山通り歯科では歯周病の原因・悪化のプロセスについて丁寧に説明をさせていただいた上で、高品質なクリーニングを提供しています。ひとりひとりが歯周病についての正しい知識を身に着ける事と、定期的なケアにより歯周病菌を減らす事で、感染症リスクを下げることが可能です。
正しい歯磨き習慣
歯周病菌を減らすためには毎日の正しい歯磨きが不可欠です。更に、歯や歯茎の状態に合わせて歯間ブラシやフロスを使うことで、細かい部分の汚れも除去できます。
口腔内を乾燥させない
唾液には自然な抗菌作用があり口腔内を潤すことで歯周病菌の増殖を防ぎます。特に空気が乾燥している今の時期は、まめな水分補給を心がけましょう。
また、インフルエンザウイルスは湿度に弱いです。インフルエンザウイルスの不活性化には室内の湿度を50~60%に保つことが効果的と言われます。例えば、温度21~24℃で湿度20%の場合、6時間後のウイルス生存率は約60%ですが、同じ温度で湿度を50%に保つと、生存率は3~5%にまで低下します。 したがって、加湿器などを使用して適切な湿度を維持することが、インフルエンザ予防に有効です。
引用論文:Airborne micro-organisms: survival tests with four viruses
まとめ
歯周病とインフルエンザは一見関係がないように思えますが、実際には密接にリンクしています。お口の中を清潔に保つことが、感染症予防の新しいスタンダードになる時代です。今年の冬は是非お口のケアを見直してみてください。
青山通り歯科からのメッセージ
最近、当院の患者さまでも突然の体調不良で予約のキャンセルをされる方が非常に多くなっており心配です。やはり、会社や通勤といった感染の要因になりやすい環境は非常に怖いですよね。マスクの着用ももちろん、インフルエンザやその他の感染症予防の第一歩はお口の中の健康も非常に大切になってきます。青山通り歯科では患者さま一人ひとりに合わせた丁寧なクリーニングとケアを行っています。お気軽にお問い合わせください。
引用元:
歯周病がインフルエンザ感染を促進 原因菌が悪影響、日大チーム確認・朝日新聞デジタル
インフルエンザに関する報道発表資料・厚生労働省
インフルエンザの流行状況(東京都2024-2025年シーズン)・東京都感染症情報センター

青山通り歯科 院長
2008年に日本歯科大学を卒業後、数々の臨床経験を積み、現在は青山通り歯科の院長として患者様に寄り添う治療を提供しています。最新のデジタル技術を活用し、審美歯科から予防歯科まで幅広い診療を行うことで、多くの患者様の信頼を得ています。