~医療機関としての取り組み~ 新型コロナウイルス感染対策について正しい知識を! その3
(4/12:内容を一部更新)
こんにちは。赤坂の青山通り歯科、院長の矢島です。
ここ最近、「この時期、お医者さんに行っても大丈夫?」「歯医者は安全?」「キャンセルした方がいい?」と言った声を時々聞きます。
その気持ち、とても理解出来ます。言われる立場としてはちょっと複雑でもありますが…今回はそういった医療機関としての新型コロナウイルス対策について「こんな取り組みをしているんだよ」という内容でお話します。
目次
・医者、歯医者に行くのは安全なの?
・当院での対策は
・スタンダードプリコーション
・メディアでも歯医者の感染リスクが話題に?
・医療機関は徹底して感染対策をしている
記事一覧
1. ~コロナウイルスの基本情報~
2. ~接触感染と手洗いについて~
3. ~医療機関としての取り組み~
4. ~正しい情報の見つけ方とデマ対策~
5. ~自粛と医療現場の実際~
さて、「不特定多数の人が集まる・触れる場所」についてお話しましょう。
具体例をあげればキリがないとは思うのですが、スポーツ・コンサートなどのイベント事や大型商業施設、アミューズメント施設などは勿論の事…細かい事を言えば、飲食店・スポーツジム・スパ・銀行や役所など、外に出ればかなり沢山の施設がそれに該当します。勿論、僕ら「医療機関」もそうです。
医科・歯科と言った医療機関は、「多数の人が集まる場所」そして「唾液や血液・体液と言った接触感染のリスクを含んだもの」を扱う機関のため、僕らをはじめ患者さんと患者さんの間でも院内感染(病院の中での感染)を起こしてしまうリスクは確かにあります。(来院される方が特定出来る、という意味ではいくらか安心かもしれませんが。)
なので、各医療機関ではそういった不安に対する最大限の努力を余儀なくされていると思います。
当院では、感染拡大の可能性が出てきた頃から、受付に手の消毒用のアルコールスプレー(アルコール濃度70%)や、患者さん向けのマスクを用意しています。(患者さん用のマスクは4月の時点で無くなってしまいました。)
また、治療の前に非接触体温計での検温、リステリンでの洗口を推奨しています。
また、最近では「パルスオキシメーターでコロナの感染の確認が出来る」というような話題がニュースにあがった事もありました。これは、血中酸素飽和度という数値を簡易的に計測出来るもので、当院でも念のために用意があります。
ですが、これは医療機関や保健所等の専門施設。軽症者用の宿泊施設で、重症度の計測として主に用いるものなので、一般家庭で用意をしたとしても。活躍出来ないもの、と現在では言われています。
宿泊療養を行う施設におけるパルスオキシメーターの配備について (厚生労働省4/14)
https://www.mhlw.go.jp/content/000622008.pdf
例の通り、一般家庭で買い漁ってしまうと必要な施設への配分が足りなくなってしまう恐れがあるとも言われていますが。これは何度も使えるものですし、1施設に1~2個あれば良いものなので、そこまでの心配はいらないのではないかな、と。
はい。
そして、アルコールもリッター単位で在庫を確保しているので、じゃんじゃん使ってやって下さい。在庫余っても困ります!遠慮して感染されても困ります!
スタッフ側の防護としては、ゴーグルやマスクに加えて、飛沫感染防止用のフェイスガードやキャップを使用しています。
また、昼・診療後の2回。ドアノブや洗面所の蛇口と言った、人が手で触れる可能性が高い箇所のアルコール消毒を徹底的に行っています。
当院はアルコール濃度77%の「ドーバーパストリーゼ」をずっと使っています。これで拭くとガラスに拭きムラが残らず、一気にピッカピカに出来るので、個人的にもかなり気に入って使っています。
(電化製品から食品まで!何にでも使えて非常に便利なのですが。現在、以上に価格が高騰している為、全然買えません…。これは通常の数倍の値段です。)
その他のアルコール製品をはじめとする消毒剤も、現在在庫の確保が非常~~~~に困難です。医療機関専門の材料屋さんからも、マスクや手袋などについて「在庫がなくなりました」「次の入荷時期が未定です」「1医院◯個まででお願いします」と言った文言のFAXがガンガン流れて来ます。
僕らにとってマスクや手袋、消毒は絶対必需品。天ぷら屋で油の在庫が無くなるようなものです。
現在各医院、死にものぐるいで在庫の確保をしていると思うので、この先数ヶ月は大丈夫かと思いますが、1日も早くこの異常事態から脱する事をただ願うばかりです。
他院でも、「スタッフの体温測定」「ゴミ箱を手の触れないタイプに交換」「電車を使用しないで出勤」「支払いのキャッシュレス推奨」「待合室は閉鎖して、患者さんには駐車場で待機してもらう」など、少しでも出来る事をやっていっていると聞きます。また、これ以外にもいろいろと各医院が全力を尽くして対応にあたっていると思います。
因みに、当院では開院当初から、診療中の白衣のままでお昼休みなどに外に出ることは禁止しています。
いろいろ付いているかも知れない格好で外に出るのは汚いですし…外からなにを付けて来るかも分からないですし…。
ちょっとした手間だとは思いますが、これ大事な事だと思っています。
「スタンダードプリコーション」「ユニバーサルプリコーション」という言葉を聞いたことはありますか?
当院では診療に使用する器具のひとつひとつをパッキングして、完全な滅菌処理をする事を続けています。
これは先に挙げた、「スタンダードプリコーション(standard precaution)」という考え方に基づいた「標準予防策」と言われるもので、「誰が何に感染してるかなんて分からないから、いっそ患者さん全員に気をつけて対応しましょう!」というものです。
Pre(先に)Caution(気をつける)
ユニバーサルプリコーションは、このスタンダードプリコーションの元になった、もう少し範囲の狭い考え方です。
「本人から病気の申告がある」「見るからに具合が悪そう」な患者さんであれば、「あぁ、じゃあ感染しない・させないように気をつけましょうね」となるのは勿論の事です。ただ、ご自身でも自覚がなかったり、感染症を持っていたとしても申告されないというケースも実際にあります。
なので、「患者さんは全員、感染の可能性があると仮定して、常に気を抜かずに器具の消毒や自らの防護を徹底しよう」という考えにたどりついたのが、このスタンダードプレコーションです。治療の際にマスク、グローブやゴーグルを身につけるのは、その一貫です。
(感染症の有無にかかわらず、平常時から全ての患者さんに対して適用する疾患非特異的な予防策)
グローブの外し方ひとつとっても実はルールがあるって知ってました?医科大学や歯科大学などでは、当たり前のように教えられるものです。こういった毎回のちょっとした気遣いの積み重ねが、結果として大きな感染の対策につながるんです。
なので、
これは ↑ フリー素材の写真なのですが、こうやって素手で機材を触るのは駄目です。世の中には、今回の新型コロナウイルスよりも感染力の強い菌や、手で触れただけで感染してしまうウイルスなんかも存在しているんです。僕らだってウイルスのような目に見えない驚異は恐いんです。
正直なところ、「遂に標的になったか…」という気持ちです。
先日、ニューヨークタイムスで掲載された「職業別の感染リスク表」です。英語ですが、リンクに元データもあります。(https://www.nytimes.com/interactive/2020/03/15/business/economy/coronavirus-worker-risk.html)
https://twitter.com/yO3j0atAtsuLGdz/status/1248401084260868102
この表は簡単に言うと、縦軸が「人と会う頻度の高さ」、横軸は「人との距離の近さ」を表しています。
確かに、歯科医は「大勢の患者さんと会う」し「患者さんとの距離も凄く近い」です。なので、表の一番右上!なんか一番危なそう!に見えますよね。でも良く見てください。ニューヨークタイムス、嘘はついてないんですけど…。◯の大きさ、これは職業別の感染者数を表しています。歯医者・歯科衛生士ちっちゃいんです。かなりちっちゃいです。僕が歯医者だから贔屓目で…というのを抜きにしてもちっちゃくないですか?
この表は「どれだけリスクマネージメントが出来ているか」という事を冷静に見るための表でもあると思うんです。リスクの割にこれだけ歯医者・スタッフでの感染例が出ていないのは(勿論ゼロではありませんが)、「しっかりと感染対策が出来ているから」という風には思ってもらえないでしょうか。
(実際、ここまでやってる歯医者さんもあります)
また、メディアによっては「この表の右上に行けば行くほど、関わると感染する」という誤解を生みそうな説明をしていたりします。この表、患者さんの感染リスクを表すグラフじゃないですよ。あくまで仕事に携わる人のリスク表です。
ここまで来ると、今話題の風評被害なんじゃ…って思う部分もありますが。事実、日本全国の歯科医院での医療従事者の感染報告はまだ数例に留められています。
このように、各医療機関では今回のような大規模な感染症が話題になる以前から基本的な感染症対策は行っています。
当院HPのトップに掲載をしていますが、新型コロナウイルスの感染対策の特設ページを設けました。少しでも皆さんの不安を取り除けるように、出来る限りの努力をしていこうと考えて日々取り組んでいます。
今回ばかりは「感染力が強い事」と「規模の大きさ」、「国策として動いている」事などから特別な追加対応も行っていますが、僕らも「毎日全力でコロナウイルスと戦っている」という事を皆さんに少しでもご理解いただけたら幸いです。
合言葉は「正しく知る、正しく恐れる」!
青山通り歯科 矢島
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1. ~コロナウイルスの基本情報~
2. ~接触感染と手洗いについて~
3. ~医療機関としての取り組み~
4. ~正しい情報の見つけ方とデマ対策~
5. ~自粛と医療現場の実際~